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修正すると、3.2トンほどになる。修正した単収水準でも同年代の日米欧の穀物の平均単収水準と同じで非常に高い。水の不足も長期的に深刻で、化学肥料など農業資材の価格も90年代始めから急騰し将来高水準を維持すると考えられる。技術革新のための農業研究投資は停滞しているから、現在の水準から将来長期にわたる大幅な反収増加は困難であろう。16)優良な農地は高度経済成長により急速に転用されており、上の供給要因のところで述べたように穀物の収穫面積は76年の戦後のピークから92年にかけて年率0.462%で減少してきた。中国の穀類(大豆を含む)生産は50年の1.3億トンから84年の中間ピークの4.07億トンヘ年率3.42%で増加し、それ以後は95年に史上最高の4.66億トンとなったが84〜94年の期間年率1.27%でしか増加しなかった。中国政府は94年7月に農家からの穀物の割当量買い上げ価格を88%引き上げ、96年にも20%引き上げた。しかし穀物の自由市場価格の高騰には遠く及ばない。政府の買い上げ価格の低さのため稲作や穀物生産をやめる農家が多いと報道されている。17)
このような穀物の世界平均の単収と生産量の増加率の最近の急減はいろいろな原因が考えられる。緑の革命には化学肥料の増投が大きく貢献したが、世界の化学肥料の総投入量は80年末から減少に転じ、90年中期まで減少し、90年代は停滞するとされる。18)世界で化学肥料の穀物単収を増加させる効果が減少し、この効果が50−84年の期間と比較して84−89年には5分の1になっている。19)これは穀物品種に蓄積された技術知識の枯渇を反映しているのであろう。緑の革命をもたらした過去の多額の試験研究投資による農業技術知識のストックが、同投資の減少により最近枯渇してきたことがこの単収の増加率の低下の主要要因である。20)アジア諸国では農業・コメ研究投資が80年代から、コメの実質世界価格の急落に伴い停滞してきた。21)世界各国の農業研究投資にも同じ傾向がある。またコメと小麦の単収は高原状態になり、生物学的上限に近づきつつあると言われている。22)世界各国での上述した農業用水の不足や土壌劣化の進行なども要因であろう。単収の停滞は上述の穀物作付け面積の大幅な減少とあいまって穀物供給を停滞ないし傾向的に減少させ、世界での穀物在庫率を低下させてきたと考えられる。
世界の穀物単収の21世紀にかけての動きはどのようになるであろうか。異論はあるが、筆者は化学物質を多投し、病気や害虫の農薬耐性に対して常に新品種を開発して

 

 

 

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